今朝、朝日新聞の紙面や一部地域の折り込みに漱石アンドロイドが紹介されていました。今年は漱石没後100年ということもあって、漱石が学んだ二松學舍を中心に、ここのところあちこちで取り上げられています。
それはそれとしてこれは110年前の話です。「明治39(1906)年、津田英学塾に入りましてそこに通うようになったのですが、英学塾は五番町にあり、二松学舎は三番町にありまして道順もよいから、二松学舎に伺うようになったわけです。十九歳ごろでした。」というのですが、これはいったい誰のことでしょう。明治44(1911)年、日本の婦人解放運動に大きな役割を果たした文藝雑誌『青鞜』を刊行しました。その後、大正デモクラシーつまり「人民による、人民のため政治」の潮流のなか、婦人参政権運動を展開しました。これは平塚明(はる)・雷鳥の談話で『二松學舍百年史』という本の中にあります。
婦人参政権は第2次世界大戦後になって実現し、昭和21(1946)年総選挙にようやく39名の婦人代議士(衆議院議員)が誕生しました。それから70年、「すべての女性が、その生き方に自信と誇りを持ち、活躍できる社会づくり」が今、安倍内閣の最重要課題のひとつになっています。
今年を振り返ってみると、特に女性の活躍が目立ったような印象があります。政治では8月の小池百合子東京都知事、9月の蓮舫民進党代表。世界に目を向けると1月に台湾の蔡英文総統、3月にミャンマーのアウンサン・スーチー国家顧問、6月ビルジニア・ラッジローマ市長、7月テリーザ・メイ英国首相がそれぞれ就任しています。11月までのヒラリークリントンさんの大統領選の健闘にもすさまじいものがありました。
夏のリオオリンピックの日本の金メダルも女性が7個で男性の5個を上回っていました。このところのウインタースポーツでもジャンプやスピードスケートの目覚ましい活躍がニュースになっています。
本校では卒業生・村田沙耶香さんの芥川賞受賞がありましたが、過去10年(136~155回)で見ると22人中13人と、国内外の政治の世界や社会同様、女性の活躍が目立ちます。特に第155回は候補となった5人のうち男性は一人だけでした。
校内でも先ほどの表彰のように女子の活躍が目立ちました。来年は男子にも幅広い分野で大いに活躍してもらいたいと思います。因みに第156回芥川賞候補は一昨日(20日)5名発表され、今度はすべて男性です。選考会は1月19日に行われますが、今度はどんな作品が選ばれるでしょうか。楽しみです。
来年、中洲先生創設の二松學舍140周年の来年は、夏目漱石生誕150年、二松學舍の卒業生・水木かおる先生作詞の本校の校歌の20周年にあたります。実は、芥川賞を受賞した村田沙耶香さんは27回生で、この校歌をはじめて歌って卒業した学年です。「花咲けよ 翔び立てよ それぞれの色に それぞれの空に」の思いが実現しました。
雷鳥の談話の続きに戻ります。「漢文の中に盛られている当時の思想というものは、永久に根本的に青年の学ぶ価値があるものだと思います。……あたらしいもののもとになるものでもあり、大いにこれからも読んでゆかなければならないものだとおもいます。」とあります。注目すべきは『論語』など東洋の思想が「新しいもののもとになるもの」と言っている点です。
本校の思想の核となるのは校訓「仁愛・正義・誠実」、校歌にいうところの「愛とまごころ人の道」です。校歌の締めくくりに「よろこびを悲しみを 眉あげて歌え」とあるのは、目の前の現実が苦しみの時も楽しみの時も、いかなる時代・環境にあっても「仁愛・正義・誠実」をもとに毎日を精一杯、今を一所懸命に生きよということです。
今年から来年にかけて、ここにいる一人びとりにとっても大きな節目になりえます。その時「仁愛・正義・誠実」をもって新しい年に新しいものに向かってほしい。
「日々是好日」です。